ビジネスを始めたり、会社を運営したりしていると、「謄本を提出してください」「登記簿謄本を用意してください」と言われる場面は多くあります。
しかし、謄本とはそもそも何なのか、原本や抄本とどう違うのか、さらに登記簿謄本と登記事項証明書は別物なのか――こうした点を正確に説明できる方は、それほど多くありません。
なんとなく「会社の情報が書かれた書類」という認識のまま手続きを進めてしまうと、必要な書類を取り違えたり、余計な手間や時間がかかってしまうこともあります。
この記事では、「謄本とは何か」という基本的な内容から、登記簿謄本と登記事項証明書の違い、証明書の種類や取得方法、そしてどのような場面で必要になるのかまで、順を追って解説していきます。
実務で迷わず対応できる知識を身につけたい方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
謄本とは何か?

戸籍謄本や登記簿謄本など、ビジネスをしていると目にしたり耳にしたりする機会の多い「謄本」。
何となく聞いたことがあっても、正しい意味を理解している方は、それほど多くないでしょう。
以下は、「謄本とは何か」を簡単にまとめた内容です。
- 公的機関が管理する原本の内容を、そのまま全部写した証明書
- 単なるコピーではなく、公的な認証が付くため法的な証明力を持つ
- 会社設立後の各種手続きや、金融・取引の場面で広く使われる
ここでは謄本について、もう少し詳しく見ていきます。
謄本の基本的な意味
謄本とは、簡単に言えば原本に記録されている内容をすべて書き写した証明書類のことです。書き写している、と言っても単なるコピーとは異なり、謄本は「この内容が正式な登録情報である」と公的に証明された書類になります。
そのため、日々の大きな転換場面、たとえば相続の手続き時や年金受給の開始など、さらにビジネスの際などに何らかの証明書類を求められた場合、原本をコピーしたものではなく「公的機関が認めたコピー」である謄本を活用することが一般的です。
謄本が持つ法的効力
謄本は法務局が管理する情報をもとに発行されるため、「その時点での正式な情報」であることが保証されます。
たとえば、金融機関が法人口座を開設する際、「この会社は実在しているのか」「代表者は誰なのか」を確認する必要があります。
その判断材料として使われるのが謄本です。
取引先とビジネスを行う際も同様で、謄本があれば虚偽の会社情報を提示されるリスクを減らせるため、安心して契約判断ができます。
こうした理由から、謄本は信頼性の高い公式資料として扱われています。
謄本が使われる主な場面
謄本は、相手が会社の実態を確認したい場面で必要とされることの多い書類です。
代表的なのが、法人口座の開設です。
法人口座の開設時、銀行が危惧するのは虚偽の会社による口座の悪用です。
このリスクを防ぐために、銀行は会社の正式情報を厳密に確認します。その際に公的機関が認めた謄本を提出することで、悪徳企業や架空の会社でないと判断されます。
また、融資や補助金の申込み時にも謄本が必要になります。
融資・補助金の支給を行う金融機関や団体は、会社の設立年や役員構成、本店所在地などによって融資金額や融資そのもの可否などを判断します。
謄本は、これらを一度に確認できる資料として使われます。
そのほかにも新規取引や業務委託契約の締結時にも求められるケースがあります。
このように公的効力を持つ謄本は、ビジネスやお金が回るシーンで必ずと言っていいほど活用する書類です。
謄本と原本、抄本の違い

謄本・原本・抄本は混同されがちですが、役割は異なります。
以下の表で、まず全体像を整理しておきましょう。
| 書類名 | 内容の範囲 | 主な特徴 | 利用場面 |
| 原本 | 登録情報そのもの | 公的機関が厳重に管理 | 一般利用不可 |
| 謄本 | 原本の全内容 | 法的効力あり | 口座開設・取引 |
| 抄本 | 原本の一部 | 必要情報のみ | 限定的な手続き |
原本の特徴と役割
原本とは、登記情報そのものが記録された元データを指します。法人であれば、法務局の登記簿にあたるものが原本です。
この原本は、情報の改ざんや紛失を防ぐために公的機関が厳重に管理しており、一般の利用者が直接取得したり閲覧したりすることはできません。
原本が一元管理されていることで、「どの謄本を見ても内容が一致する」という信頼性が保たれています。
謄本の特徴と用途
謄本は、原本に記録されている内容をすべて記載した証明書です。
現代では事務のコンピューター化に伴い、「全部事項証明書」と呼ばれるケースも多いですが、慣習的に「謄本」という呼び方が根強く残っています。
また、法人の登記簿謄本として最も一般的に利用されるのは「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」です。登記簿謄本では会社の設立から現在までの変更履歴を含めて確認できるため、会社の全体像を把握したい場面で多く活用されます。
なお、謄本の発行は費用が発生します。どの謄本を取り寄せたいかによって金額は変わりますが、300〜600円程度が相場です。申請先は法務局窓口や役所窓口などになりますが、最近ではコンビニやオンラインで取り寄せられるものも増えています。
抄本の特徴と活用法
抄本は、原本のうち必要な部分だけを抜粋した証明書です。法人登記では「現在事項一部証明書」などが代表例です。
謄本との違いは、過去の履歴まで含めない点にあります。そのため、手続き内容が限定的な場合や、「今の情報だけ確認できれば十分」という場面で使われます。
たとえば、簡易的な取引確認や、すでに関係性がある取引先への追加提出などでは、抄本で足りるケースもあります。
ただし提出書類としてどちらが必要かは、必ず相手方の指定を確認することが大切です。
法人の登記簿謄本と登記事項証明書の違いとは?

登記簿謄本と登記事項証明書は実質的に同じものです。名称が変わった背景には、登記制度のコンピュータ化があります。
- 以前は、紙の登記簿を写した書類を「登記簿謄本」と呼んでいた
- 法務局の登記情報がコンピュータ管理に移行
- 電子化された登記記録は原本ではなく、データになるため、原本の写しを意味する「謄本」という名称では実態に合わなくなった
名称が違うだけで受け取る側はこれまでと同じく、基本的には「書面」で謄本を受け取ります。オンラインで謄本の閲覧が可能なケースもありますが、謄本そのものは郵送で送ってもらうか窓口で受け取るかの2通りです。
なお、記載されている内容や法的効力は、どちらも変わりありません。
登記簿謄本の内容と特徴
登記簿謄本は、登記簿を紙で管理されていた時代に発行されていた証明書です。紙ベース時代の登記簿謄本には、主に次のような項目が記載されています。
- 会社法人等番号
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 会社の目的
- 設立年月日
- 資本金の額
- 役員の氏名・役職
- 役員変更や本店移転などの履歴
これらの情報が一つの書類にまとめられており、会社の成り立ちから現在までを確認できる資料として使われていました。
ただし管理は完全に紙媒体だったため、閲覧や発行に時間がかかったり、遠方の法務局では取得しづらかったりなどが課題でした。
登記事項証明書の内容と現状
登記事項証明書は、登記情報がコンピュータ化された後に使われている、登記簿謄本のことです。名称が異なるだけで内容は変わらず、確認できる情報の範囲や法的効力は同一です。
ただしデータ管理のため、オンライン請求が可能であり、必要に応じて「履歴事項」「現在事項」など種類を簡単に選べるようになっています。
また発行スピードが早く、全国どこでも取得しやすい点も、登記簿謄本の時代にはなかった利点です。
登記事項証明書の主な種類

登記事項証明書にはいくつか種類があります。
| 種類 | 記載内容の範囲 | 主な用途 | 使用頻度 |
| 現在事項証明書 | 現在有効な登記情報のみ | 簡易確認 | 低 |
| 履歴事項証明書 | 現在+過去の変更履歴 | 口座開設・融資 | 高 |
| 代表者事項証明書 | 代表者情報に特化 | 委任・代理行為 | 中 |
現在事項証明書の特徴
現在事項証明書は、請求した時点で有効な登記情報だけを記載した証明書です。
会社名や本店所在地、現在の代表者など、「今この会社がどういう状態か」を確認することに特化しており、過去にどのような変更があったかといった履歴は記載されていません。
そのため活用シーンは限定的で、「現時点での情報さえ分かれば十分」という場面で求められるケースがあります。
取得にかかる費用は、600円です。オンライン請求で郵送してもらう場合は520円、窓口で受け取る場合は490円となります。
履歴事項証明書の特徴
一般に「登記簿謄本」と呼ばれている書類は、実務上この履歴事項証明書を指しています。
履歴事項証明書には、現在の登記情報に加えて、過去に役員が交代したことや本店を移転した事実など、会社がどのような変更を経てきたかも記載されている書類です。
会社の経緯から現在まですべてを把握できるため、会社の実態や継続性を第三者が確認するための資料として使われます。
取得費用は現在事項証明書と同じです。
代表者事項証明書の特徴
代表者事項証明書は、会社の代表者に関する情報だけを抜き出した証明書です。
会社全体の登記内容を確認するというより、「この人物に代表権があるかどうか」を証明することが目的になります。
そのため、会社名や本店所在地といった基本情報に加え、代表者の氏名や住所、代表権の有無といった事項が中心に記載されます。会社の目的や過去の変更履歴などは、原則として含まれません。
この証明書が使われるのは、代理人を立てる手続きや、委任状とあわせて代表権を確認したい場面です。契約書の締結や一部の金融・不動産関連の手続きでは、代表者事項証明書の提出を求められることがあります。
法人登記簿謄本の取得方法

法人登記簿謄本(登記事項証明書)は、取得方法によって手間や受取までの時間が異なります。
| 取得方法 | 手数料の目安 | 受取までの時間 | 主な特徴 |
| オンライン申請 | 約500円 | 数日〜 | 自宅から申請可能。手数料が安い |
| 窓口申請 | 約600円 | 即日〜 | その場で受け取れる可能性が高い |
| 郵送申請 | 約600円 | 約1週間 | 来庁不要だが時間がかかる |
ここではそれぞれの手順と特徴を見ていきましょう。
オンライン申請の手順と特徴
オンラインでの法人登記簿謄本の取得は、法務局が提供する登記・供託オンライン申請システムを利用します。
まず専用サイトにアクセスし、会社の商号や本店所在地など、申請者情報を登録します。その後、IDとパスワードの設定をし、ログインを行います。
次に必要な証明書の種類を選択します。その後、「会社・法人検索」のボタンをクリックし、請求したい会社の会社法人等番号を入力して検索してください。
表示された会社を選択し、次の画面で証明書の種類・通数などの請求書情報を入力したら、受け取り方法(郵送か窓口か)などの請求者情報を入力し送信ボタンを押します。あとは費用の支払いのみです。
「処理状況を確認する」のボタンから請求した書類一覧を確認できます。支払いが済んでいない書類の「納付」ボタンをクリックし、支払い手続きを行えば完了です。
詳しいやり方はこちらにも書かれているので、ぜひ参考にしてみてください。
窓口申請の手順と注意点
まず、窓口に備え付けられている「登記事項証明書交付申請書」に商号や法人番号などの必要事項を記入して提出します。多くの法務局には「証明書発行請求機」が設置されているため、手書きが面倒な方は、こちらを活用すると良いでしょう。
その後、5分〜15分前後で発行されます。費用は600円で収入印紙での支払いも可能です。素早く書類を受け取れるため、急いでいる方は窓口利用がおすすめです。
ただし、法務局の開局時間(平日9時〜17時まで)内のみの受付となります。その時間に動くことが難しい場合は、オンライン申請のほうが安心です。
郵送申請の手順と所要時間
法人登記簿謄本は郵送申請も可能です。
交付申請書をダウンロードして記入し、手数料分の収入印紙を貼付します。その後、申請書と、切手を貼った返信用封筒を同封して最寄りの法務局へ送付すれば、手続きは完了です。
申請書を入れた封筒には、「申請書交付在中」と記載しておくと、窓口で混乱しないで済むためよりスムーズです。
なお、返信には約1週間程度の期間を有します。ポストに入れる手間も考えると、オンライン申請をして郵送手配を依頼したほうが手軽です。
法人登記簿謄本が必要になるのはいつ?

法人登記簿謄本(登記事項証明書)が必要になる場面は、主に次の2つです。
- 法人口座の開設や融資など、金融機関との取引を行うとき
- 新規の取引先と契約を結ぶ前に、企業の実態を確認するとき
いずれも共通しているのは、第三者が会社の信頼性や実在性を確認する必要がある場面だという点です。
口座開設や融資申込み時の要件
金融機関で法人口座を開設したり、融資を申し込んだりする際には、ほぼ確実に登記事項証明書の提出を求められます。
その理由は、銀行が「この会社が本当に存在しているのか」「誰が正式な代表者なのか」を、客観的な資料で確認し、口座悪用や返済の遅延のリスクなどをチェックするためです。
多くの場合、金融機関が求めるのは履歴事項証明書です。現在の情報だけでなく、過去の変更履歴などから会社の運営状況も把握します。
新規取引先調査時の活用法
新しい取引先と契約を結ぶ際、相手がどのような会社なのかを事前に把握することは欠かせません。
会社の実態を把握するために、登記事項証明書が役立ちます。
また、競合調査の場面でも登記事項証明書は活用されます。
登記事項証明書は基本的に誰でも閲覧が可能です。専用サイトでその会社の法人番号を入力すれば、登記事項証明書の発行を申請できます。
競合企業の規模感や過去の履歴などを把握することで、ビジネスの戦略を練る際に役立つでしょう。
まとめ
謄本とは、公的機関が管理する原本の内容をすべて写し取り、その正確性を証明した書類です。
単なるコピーとは異なり法的効力を持つため、金融機関や取引先、行政手続きなど、信頼性が求められる場面で広く使われています。
さらにビジネスを進めていると取引先の情報確認として活用したり、競合調査に必要になったりするシーンも多くあるため、役割や申請手順を正しく理解しておくことが大切です。
手続きのミスや無駄なやり直しを防ぎ、ビジネスをよりスムーズに進めるために、ぜひ今回の記事を役立ててください。



